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Book Discussion #5: レベッカ・ソルニット『オーウェルの薔薇』

Saturday, 21 December 2024, 10:00-11:30 AM JST

Commentators: ASO Erica (Professor, British literature, Department of English), ​

MATSUI Yuko (Professor, British literature, Department of English)



松井優子教授:オーウェルの白い薔薇? 

​ レベッカ・ソルニットの『オーウェルの薔薇』(2021)によれば、ソルニットがウォリントンのコテッジで見つけたジョージ・オーウェルゆかりの二本の薔薇の木は薄ピンクやサーモンピンクの花をつけており、のちにソルニットがその墓前を訪れたときには一本の赤い薔薇が花を咲かせていたという。赤い薔薇はイングランド国花や労働党のシンボルなど多様な意味を持つ。一方、同じくソルニットの著書には、エリック・ブレアの祖先がスコットランド低地地方の出身で、オーウェル自身、最晩年をインナー・ヘブリディーズ諸島のジュラ島で過ごし、代表作『一九八四年』(1949)の執筆もここで始めたことが記されている。そのスコットランドでは、高祖父ブレアが貴族と縁を結んだ18世紀半ばにはジャコバイト蜂起との関連で、そして、オーウェルが執筆活動を展開していた20世紀前半には権限委譲との関係で、白薔薇に特別な意味が賦与されるようになっていた。ここでは高祖父への言及がある第5章とジュラ島での生活について扱われている第7章を中心に、ソルニットがこの評伝で提起しているオーウェルと土地や抵抗の問題について、スコットランドの視点からとらえなおしてみたい。



麻生えりか教授:戦争に抗う「時間」と「薔薇」

 ソルニットは『オーウェルの薔薇』において、「戦争や不況が続く悲惨な時代を生きたオーウェルは、自ら戦場に身を投じて戦い続けた社会主義者である」という固定化された「オーウェル的な」作家像とは全く別の、小動物や花や樹木を愛して未来に希望をつなぐオーウェルの姿を私たちに見せてくれる。

 本レポートでは、ソルニットが本書で提示するさまざまな魅力的なテーマから「時間」と「薔薇」を選び、 それらの対極にあるとされる「戦争」との関係を考えてみたい。人間よりもはるかに長い生命を有する樹木の「サエクルム(saeculum)」は、短いスパンでしかものを考えられない人間たちに、もっと深く長く環境と関わり合うことの喜びと豊かさを教える。また、美やくつろぎ、内的生活の象徴であるともいえる薔薇は役に立たず余分なものに見えるがゆえに、人間にとって欠くべからざるものである。

 ソルニットは、「重要な点で[オーウェルは]モダニストではなかった」(118)と述べるが、モダニストもオーウェルと同じく時間と薔薇を重要視しつつ戦争に抗っていたことを、モダニストであるヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』(1925)を例に考えてみたい。ソルニットが考える「オーウェル的」なものと「ウルフ的」なものは、従来はかけはなれていると思われてきたが、2人の距離は案外近いといえるかもしれない。

 
 
 

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