19 August 2021, 10-11AM JST
中川僚子教授(聖心女子大学)と麻生えりか教授(青山学院大学)をコメンテーターにお迎えし、カズオ・イシグロ著『クララとお日さま』の読書会を行いました。
中川先生には、廃棄、祈り、牡牛の描写の分析から、今日的な問題を提示する作品として論じていただきました。そして麻生先生には、ほかのイシグロ作品との比較を通して、風景描写について議論していただきました。
全体のディスカッションでは、自然/人間、自然/人工物といった二項対立を包み込むような作品の特徴が文学やサウンドスケープの観点から指摘されたり、AIであるクララの一生を通して描かれる人間社会や内面性についても活発に議論がされました。
・中川僚子教授(聖心女子大学)
・イシグロは、本作では「AIロボット」とともに「環境汚染」というテーマを取り上げているが、そこには何がメッセージとして仮託されているのか、またそれは果たしてメッセージと呼んでよいものなのか。
・本作が時間をおいて再読、再再読されたときに、読者の読みがどう更新されうるようにイシグロは考えていたのか。
麻生えりか教授(青山学院大学)
・風景描写を中心に、イシグロの他のテクストからも適宜引用しながら『クララとお日さま』の特徴を考察
・生命のサイクル(老い)の描き方や、イシグロが小説を書く時にもっとも重要視する感情と環境をどう結びつけるのか、といった課題について
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