Online Talk#31: Trees, Gardens and Peace: Reading Mrs Dalloway (1925) Now
- Environmental Humanities Forum AGU
- Jul 22
- 2 min read
Saturday, 19 July 2025, 10-11 AM JST
Speaker: ASO Erica (Professor, British literature, Department of English)
木々と庭園と平和--100年目の『ダロウェイ夫人』(1925)を読む
麻生えりか(青山学院大学文学部英米文学科教授)
ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』は、第一次世界大戦後のロンドンを舞台に、複数の登場人物の内面が交錯する小説である。本作では、戦争の記憶や死の影が色濃く描かれる一方で、都市の公園や庭における自然描写が重要な役割を果たしている。本発表では、ウルフが語った「登場人物の背後にトンネルを掘る」という意識の流れの比喩を、森の生態学者スザンヌ・シマードの「母なる木」理論と重ね合わせ、人物間の共感が地下の根のネットワーク (Wood Wide Web)のように生まれる可能性を考察する。さらに、ジル・クレマンの「動いている庭」概念とウルフが愛したモンクス・ハウスの庭との共鳴を手がかりに、自然との共生的関係を描く想像力の場としての〈庭〉を再評価する。また、戦時下における園芸を論じたケネス・ヘルフランド Defiant Gardens (2006) や、レベッカ・ソルニットの『オーウェルの薔薇』 (2021) における「戦争の反対語は庭である」という視点も参照し、破壊やトラウマを描くだけではない、希望の回復としての戦争文学の可能性を環境人文学の観点から探る。戦争文学に対してネガティブな印象が支配的な中で、自然や植物に注目することで、他者との共感や再生の可能性を読み取る視点を提示したい。
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